みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

今回は、「モバイルバッテリーの処分方法」についてご紹介します。

近年、スマートフォンやタブレットの普及により、1人に1台が当たり前となりつつあるモバイルバッテリー。そのモバイルバッテリーはリチウム電池の集合体で、スマートフォンなどの内蔵電池と同様、使用すれば劣化が必ず伴い、いつかは処分しなければならない日が来ます。

モバイルバッテリーの誤使用に起因する、発煙・発火というニュースは数ヶ月のペースで報道されますが、誤った処分方法による事故に関しては報告例が少ないためか報道数も少ない上、具体的な処分方法について言及されることも多くはありません。

本記事では「いわれてみれば知らないモバイルバッテリーの処分方法」をご紹介していきます。

・そもそも正しい使用・保管方法は?

本題に入る前に、少しだけ寄り道をします。

みなさまは普段、何気なく使っているモバイルバッテリーの「正しい使用・保管方法」をご存知でしょうか?

街を歩いていると、驚きを隠せない顔で路面にモバイルバッテリーを盛大に叩き付けるドロップテストを(過失とはいえ)トライしてしまっている人をチラホラ見かけます。また、使用後に充電を行わずに長期間放置するという人も見かけます。

もちろん、これらの行動は全てモバイルバッテリーにとってはNGです。これらの行為は、どれだけ安全機能が揃った製品を使用していたとしても、事故や故障に繋がるリスクが格段に上昇します。

基本的にモバイルバッテリーには強い衝撃を与えない熱がこもる場所では使用しない保管時は室温程度の場所に保管(※1)長期保管時は充電残量を半分程度にするバッテリー残量が0%の状態で放置しない ことが重要となります。

ただし、これらを守っていても一般的なリチウムイオン電池の設計上の充放電サイクルが500回である為、いずれは劣化により処分する必要が生じます。

※1:通常時時推奨保管温度:0°C~45°C(保管は半年を限度とし、半年に一度は充電を行うこと)

・正しい処分方法は?

いよいよ、本題に入ります。

モバイルバッテリーを処分したい時に絶対にやってはいけないのが、普通ゴミなどに混ぜてゴミ収集に出してしまうことです。

これをしてしまった場合、先述のリンクの様にゴミ収集車が炎上したり、最悪の場合は建物火災に発展することも考えられます。また、近年のリサイクル技術の向上によりリチウム電池の大部分がリサクル可能となったこともあり、環境面から見ても有効利用できる資源を看過するというのも頂けません。

では、モバイルバッテリーを処分する際はどうすれば良いのか?答えは簡単です。

スーパーや家電量販店ではお馴染みの「充電式電池リサイクルBOX」に製品を入れるだけです。このボックスに使い終わった製品を入れると、リサイクルに回されます。

・便利なボックス。けれど落とし穴も存在

使い終わったモバイルバッテリーは「充電式電池リサイクルBOX」へ。

概ねこの認識で問題ありませんが、実はボックスに入れて良いメーカー、入れてはいけないメーカーがあります。

ボックスへの投入可否を判断するには、上記の「スリーアローマーク」が記載されている製品か、電池関連のリサイクルを管理する「一般社団法人JBRC」の公式サイトから、処分したい製品の製造元がJBRCに加入しているかを確認する必要があります。

JBRCに加入している企業はこちらから検索することが可能で、Anker や エレコムなどといった有名メーカーの多くがJBRCに加入しています。

回収ボックスの設置、リサイクルなど運営に係る費用はメーカーからの加入料で賄われているため、リストにないメーカーの製品は「充電式電池リサイクルBOX」に投入してはいけません

モバイルバッテリーの回収が正式に開始されたのは2017年4月〜で、開始されてからの日が浅いからか、Belkin などの有名メーカーでもリサイクルの対象外となっているメーカーもあります。

また、本ボックスに投入できる電池には制限があり、カーバッテリーや単3電池やボタン電池類はJBRCによる回収の対象外となっています。

・JBRC非加入メーカーの場合、処分は絶望的

先述した通り、JBRC非加入メーカーの製品は回収ボックスに投入することができません。

そのため、簡単に製品を購入できるにも関わらず、処分には大きな労力が伴うということがあります。

これは、Twitterユーザーにより共有された、JBRC非加入メーカーのモバイルバッテリーを処分しようとした時の体験談です。

上記の通り、処分にかなり苦労し、最終的には特例として「充電式電池リサイクルBOX」に投入された場合と同じ様に処分できたようです。おそらく、同じ手順を踏めば「特例として」引き取りを認めてくれそうですが、処分する為の手間としてはかなり面倒です。

また、JBRC非加入メーカーに回収を相談しても「お住いの自治体に問い合わせて欲しい」とのスタンスを取り、自治体は「メーカーの指示に従って欲しい」といった具合に処分先のたらい回しが行われているのが現状であり、JBRC非加入メーカーの製品を購入すると、ロクでもない結果に陥ることが考えられます。

メーカーや行政から処分の責任を放棄され、JBRC非加入メーカーのモバイルバッテリーを処分する場合、購入者自身が各都道府県から認可を受けた産業廃棄物処理業者に処分を依頼するしか処分方法がありません。(一部の自治体では有害ゴミとして処分できる場合もあります)

・リチウム電池の環境負荷と新技術の台頭

モバイルバッテリーという製品が登場してから今日に至るまで、その電池にはリチウムイオン電池が使用されてきました。

一概にリチウムイオン電池といっても、年々進化を遂げており、小型・軽量・高容量化が進み、初期製品と現行製品を比較すると性能に大きな差があります。

リチウムイオン電池の飛躍的な性能向上により、電気自動車が実用化されたり、新幹線や特急型車両などへの搭載により、停電時の自律走行や二酸化炭素排出量の削減が行われています。リチウムイオン電池の性能向上は、我々の生活を豊かにする一方、需要の拡大により重大な環境破壊も行われています。

環境負荷の少ない かん水生成法は生産量が少ない

リチウムイオン電池の主原料となるリチウムの採掘には、土壌の劣化、水質・大気汚染、生態系、食糧生産に害を及ぼす可能性が指摘されています。

また、こちらもリチウムイオン電池に必要なコバルトに至っては、毒性が強いため、リチウム採掘時と同じ問題に加え、発がん性もあるため、採掘労働者や周辺住民に重大な健康被害をもたらします。さらに、コバルトは紛争地域に多く埋蔵しており、それ以外の場所でも強制労働や児童労働など採掘に様々な問題がつきまといます。

モバイルバッテリーに限らず、多くの電化製品などでリサイクルの必要性が強調されるのは、このような事情があり、普通ゴミでの処分は安全性に問題がある上、環境的にも重大な問題があります。

しかし、これらの問題を軽減するため開発され、実用化に漕ぎ着けたのがリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池です。

リン酸鉄リチウムイオンは、リチウム、鉄、リンを主な原料として構成されており、リチウムイオン電池とはコバルトを使用しないという決定的な違いがあります。

近年ではモバイルバッテリーへの採用もある

コバルトを使用しないため、環境負荷がリチウムイオン電池と比較して低い上、リチウムイオン電池が燃える主な原因がコバルトであるため、これを採用しないだけで、出火のリスクを低減でき、大幅に安全性が向上しています。

また、リチウムイオン電池では約500回だった充電サイクルが、約3,000回と6倍にまで向上しており、製品寿命が大幅に伸ばされます。その他にも、低温に強く、自己放電率も低いため、従来製品では難しかった長期保管が容易に行えるというメリットもあります。

そのため、長期間使用できる(処分までの時間を伸ばせる)という観点から、リン酸鉄リチウムイオン電池を採用した製品を選択することで、環境問題に貢献できるかもしれません。

・最後のことを考えて製品を選ぶことも重要

近年は技術の陳腐化もあり、低価格化が進み、熾烈な価格競争が繰り広げられているモバイルバッテリー業界。

Amazon を中心に謎の中華メーカーが参入していたり、大手メーカーでも品質に問題のある製品を販売したりと、技術は成熟したにも関わらず、発火などの事故報道が相次いでいます。これにより、モバイルバッテリーを購入する際に「安全性」を意識する人は多くいますが、「処分」についてまで購入時に検討して、製品を購入する方はごく少数なのではないでしょうか。

先述の通り、JBRC非加入メーカーのモバイルバッテリーの処分には非常に大きな労力が必要であり、産廃として処分する場合も、購入代金以上の金額が必要となります。

そのため、モバイルバッテリーの選定・購入には、使用開始〜処分という長いスパンの物事を考える必要があります。

 

・関連リンク

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使い終わった電池の捨て方は? – Panasonic

最終更新日:2023年10月24日

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